ホーム »  建築風景

建築風景

– 安曇野発 - ログ現場奮闘記 !

 

 

 

 

 

 

 

他県に住み、日々忙殺の日常を持ちつつも、念願のログ別荘を安曇野に求めたT.Tさんご夫妻……
その実現への道程を辿ってまいりましょう。

※全ての写真はクリックで拡大します

 

いつかは、草香る里山でのんびりと暮らしてみたい……
そう思いたち土地を求めたのが6年前。

それから、仕事のことや様々なシガラミに煩いつつ、いつのまにか時を過ごすも、つねに想うは田舎に暮らす我が姿。
そうして、いろいろな問題を一気に解決する機会を得、夢の青写真が具体化されたのが今年の春。

かくして、勤勉なスウェーデン人が精一杯の真心をこめて造り上げたログハウス(キット)が、8千数百キロの海原を45日間かけて渡り、ようやく日本へやって来ます。

東京の港にコンテナ船が入るのが8月20日で、通関および輸送の手を経て安曇野のTさんに届くのが8月29日の予定です。


▲スウェーデン、W.S社工場出荷の様子

その間、じっくりと雑木伐採や基礎工事などの準備を進めておけば、現場到着と同時に、さぁ即着工という段取りが整います。

 

 

 

 

 

 

 

 

何百年か千年ほどもの悠久の時を、おそらくは誰も手をかけず野放図に繁り世代交代をつづけてきた木々たちは、わずか数日で全て伐り倒されてしまいました。

目をふせるも詮無きことではあるけれど、ともかくも、私たちの夢のために犠牲となってくれた森に感謝をし、心で詫びるよりありません。

 

一掃された大地に雨が降り注ぐ……

少々の雨であれば何ら問題はないのだけれど、ある豪雨の日、黒い土を露にさせたそこは、山の上から川の如くに流れ落ちる雨水や土砂を以前のように讃えることはなく、みるみるうちに洪水の沼と化してしまいました。
困り、役場に相談をするも、水の道は雨が勝手に決めるもの、だから手の施しようもないということであり、土地主さん銘々が擁壁などをこしらえて対処するしかないということでありました。
ともあれ応急処置のみをし、全て竣工した後に、外構工事でそれをすることになっているわけですが、人間の仕業に対する自然の抵抗力とは実に怖いものであるを実感した次第です。

 

〈地盤改良〜基礎工事編〉

さて、気を取り直して地盤調査……

日本沈没などという迷信が真しやかに囁かれる昨今、建物への保険のみならず、地盤と基礎にも保険をかけるのが望ましく思われます。
それで、まず地盤そのものの強度を測り、それ相応の基礎耐力を見極める必要があります。

スウェーデン式サウンディング試験という方法により、建築後に不同沈下等の重大瑕疵が起きる可能性の有無を判断します( 地盤調査のみでも¥35,000要するのに対し、その上に10年間の損害保証をつけてもセットで¥73,500というものであるため、弊社では極力、ジャパンホームシールド(株)の保証システムをお勧めしています。 詳しくは「住宅性能保証」のページから「 ジャパンホームシールド」のホームページにリンクしてご覧ください)。


ところがです……
その結果、保証対応不適合という診断が下り、何らかの方法による地盤改良を要するということになったのです。

そこで、改良方法を決めるため試掘りをしたところ、120cmほど掘ったところで水がダクダクと湧いてきました。
と言うことは、表層改良や柱状改良などの、比較的安価とされる方法が不可ということになってしまうのです。

誰も予想しえない最悪事態に、私とTさんは困惑しました。

しかし、調査会社の土木管理総合試験所の担当者氏と土建業者の藤原興業さんの知恵のおかげで、適切な工法が協議され一大事を逃れました。

以下に地盤改良工事の概説写真を添付します。

▲建築面積より、四辺それぞれ50cmほど広げた施工地を深さ約150cm掘削し、土圧が分散しないように平らにならします。

(※「どうせ掘るなら、ついでに、ちょっと見せてください……」と、とんで来たのは県教育委員会の埋蔵文化財保護局の人。なんでも、このあたりは弥生期の遺跡などが出るかもしれない…という地域らしく、もし土器か何かの破片でも見つかったら、即刻「工事中止!」というわけらしいのだが、幸い(不謹慎?)何もなくホッとしました。)

 

▲砕石を厚さ30cmほど敷き詰め、転圧をかけて固めます。

 

▲さらに、30cmごとに同じ作業を繰り返し、隙間なく砕石が詰まるようにします。

▲同じ工程を5回行い、強固な砕石地盤をつくります。

 

▲地盤改良工事の後、もう一度、地盤強度の検査を行います。

費用は二重にかかってしまいますが、安心な保証のためにはやむを得ません。
ともあれ、「これだけガッチガチなら今度は大丈夫でしょう。」と、いつもの検査員さんもニッコリと太鼓判をおしてくれ、数日後、JHS社から「地盤調査報告書」が届き OK が出ました。

やれやれ、まさに雨ふって地かたまる、の心境でしたが、永い将来のためには、かえって良かったのかもしれません……。

しかし、ご費用の捻出にご苦労なさられたTさんには大変申し訳なく、稀なこととはいえ、あらゆるケースを想定した計画をご相談するべきであったことを反省するばかりです。(※ このようなことを事前に回避するために、一案として、土地ご購入前の地盤調査を、販売者様とご相談されることをお勧めします。地盤調査のみなら35,000円で出来ます)。

▲安曇野市は、とても景観の善し悪しに気をくばる美しい街です。

そのため、以前から「景観形成委員会」なる任意団体による規制指導が行われておりました。

本年4月、「景観条例」という新しい市条例が施行され、外壁や屋根の色、それに外構や工作物などが華美にならないよう、取り締まりが強化されることになりました。
よって、それに伴う届け出と看板設置が義務化されました。

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

8月11日から基礎工事が始まりました。

▼ 基礎工事、第4〜5日目の状況です。

地盤改良後の工事であるため、土がなく、一層に頑強な基礎地盤になっています。
加えて、丁寧な仕事に感心します。

 

▼ 基礎工事、第7日目……
保険会社(JIO)により鉄筋の配筋検査が行われました。

 

そして、その日のうちに土間部のコンクリート打ちが奇麗に終わりました。

 

第8日目に布基礎部の型枠を建てました……
すると、途端にゲリラ豪雨の襲来。
まいりました。

 

第9日目……
布基礎部のコンクリート
生コンに素が入らないように、バイブレーターで空気を抜きます。
ここで、空気を抜かずに手を抜いてしまうと、とんでもなく弱い基礎になってしまうのでご用心。

 

▼ 基礎完了
型枠をはずせば、これ此のとおり……
藤原興業さんの職長さん曰く、「芸術的」と言っていい美しさ。
エヘン、エヘン!
ベランダ部分の独立基礎の工事を含み、ここまで実質、12日間の工程でした。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

〈ログ組立—本工事編〉

8月29日
さて、いよいよ待ちに待ったログハウスのキットが現場に到着しました。
棟梁の白石大工さんが、コンテナ扉の封印をはずします。
エイヤァ!


荷おろし作業の様子は撮影できませんでした。
だって、何しろものすごいボリュームの部材で、その上、宮城県行きのルストヒュース(八角形 のガーデンハウス)まで混載されてきていたのでレポートどころではない忙しさ。プラス、時々、気まぐれに降る小雨にも大慌て……。
撮影も忘れて、やっと降ろし終わったころには、もう皆ヘトヘトでした。

 

▼まずは、土台である床フレーム を組んでいきます。
キットなので切る必要はなく、全ての部材の行き先は自ずと決まっています。

▲スウェーデンの木は非常に堅いので、インパクトドライバーでコーチボルトを締めたあと、もう一度ラチェットで確認締めをします。ガガガガガ。カチカチカチ。
(※赤い糸は、床フレームが真っ直ぐであるかどうかを確認するためのもの。)
緑色に含浸された防腐処理は、いま欧米で最も信頼性が高いとされるWolmanitという工法。
詳細:http://www.sweden-loghouse.com/gunnarsson_feature/wolmanit

 

▼床フレームを組み、ログ材の一段目を置いたところで
対角寸法を計り、歪みを直します。

一段積むごとに、カケヤと呼ばれる大きな木槌で叩きます。▲
カーン、カーンと、安曇野の山に響く音が心地よい。

▼ちょっと厄介なのが、一段ごとに、電気の線を予め工場であけられてきた配線穴に通すこと。

白石棟梁に教わりながら、おっかなびっくり工具を使ってみる施主のTさんご夫妻。▲
これもまた、良い思い出になるのでしょう……

▲セトリングビス:ログ材の固定に、普通のビスや釘を打ったのではセトリング(木が痩せて隙間をつくること)に対応せず隙間を生じさせてしまいます。
でも、スウェーデンではスタンダードのこのビスを使えば、不思議とセトリングに対応して隙間を下げてくれるのです。その上、当然、木ダボよりずっと強いくて安心です。

▼工事期間中には時々雨が降ります。
ログというものは、組み上げた後ならそれほど心配ないんですが、組む前のログ材を濡らしてしまうと大きく捻れてしまい後の工事が大変になります。だから、養生は肝心!
雨の心配がなさそうでも、毎日の夕方はこうしてブルーシートで囲います。もちろん、組み上げ途中のログも大切に保護します。
この日は、思いもよらぬ台風襲来で、以後3日間、工事ストップしてしまい、まいりました。

▼ログが桁まで積まれたら安全対策の足場を架設し、そしてボルトを上から通します。
ボルトは、構造強度を増すだけではなく、ログ材がやせてセトリングした際の修正に必要なものになりす。

▲時々、素直に入ってくれないボルトがあると、ちょっと苦労します。そんな時は、ハンマーでガンガン!と叩くよりありません。

▼さぁ、待ちに待った棟上げです。安全第一でクレーンを手配します。
高所作業にはヘルメットも忘れずに。

▼屋根工事です。
野地板だけじゃなく、ルーフィングの施工まで大工さんがやってくれちゃいます。
ところで、標準でセットされている スウェーデン製のアスファルトシングル材はすごいんです。
下地の防水フェルトを不要とし、何しろ一度貼ったら絶対に剥がれないという強力さで、トタン板のように錆びることなく、瓦やスレート材のように割れることもない、半永久的と言っても過言ではありません。
(もちろん、ご要望と必要に応じた自由選択は可です)。

▲野地板を打つ釘は、できるだけ正確に垂木に打ち付けます。
もし、垂木を外れて釘が出てしまった場合、冬、釘の表明が結露をし、室内に水滴を発生させる要因になります(雨漏りと間違い易い)。

▲案外と、張る作業より裏の薄いビニールを剥がす手間が大変。「お〜ぃ、まだかい?」と上から大工さんが叫びます。

▼屋根が終われば、ようやく落ち着いて内部造作にかかれます。
仮置きしていたコンパネを外して、まずは床下の掃除です。
床下に木屑などのゴミが残っていると、それがシロアリの餌になるので気をつけましょう。
※もっとも、スウェーデン産の北欧パイン材は、シロアリも歯が立たないというほど堅いと言われていますが、奇麗なことにこしたことはありません。

▼床下と天井裏には断熱材を入れます。
ここでは、100mm厚のグラスウールを 使用しましたが、必要に応じて、ロックウール・スタイロフォーム・コルク板などの材料選択ができます。

▼そろそろシステムバスを設置しましょう。
お風呂はタイル貼りや檜風呂も可能ですが、多くはユニット製品を使います。
また、設備機器は配管の口径や電圧などの問題があるので、基本的に日本製のものをお勧めしています。

▲今回、はじめてタカラスタンダードさんの製品を採用してみました。
なんでも、左写真の鋼製床フレームが耐震性能に抜群の威力を発揮するそうです。
そもそも地震には強い弊社ログハウスにとり、文字通り「鬼に金棒!」。

▼内部造作工事の途中です……
ログ本体の組み立てが終わり、造作工事になると、いよいよ大工さんの腕の見せ所。
早さより丁寧さが売り……。慌てず、落ち着いて良い作品を造りましょう。

▼日本の大工さんの技術は「世界一」と言っても過言じゃありません。
ただ、ログハウスはログハウスなりの、ちょっとしたノウハウが必要。
例えば、洗面所回りなどの間仕切壁を造作するに際しては、セトリングの縮み幅を考慮し、二階床との間に隙間を持たす〈左〉、ログ壁との繋ぎは縦の切れ目を入れる 〈右〉、などの対応をします。

▼壁板を張る時も上の隙間は残し〈左〉、幅広の廻り縁でカバーします〈右〉。

▼ようやく階段が出来ました。
階段はスウェーデンから格好良いキット部材を持ってきても良いのですが、 予算を抑え、現場の微妙なサイズに合わせるためSPF材を使用しました。
階段掛けは家の見せ場……。家具などの木工仕事も得意な、白石大工さんならではのデザイン性にお施主さんも大満足。

▼造作工事が終わったら、電動サンダーで内外の壁を磨き、汚れや小さな傷を奇麗にします〈左〉。
この時、 ノッチの出っぱった所は特に念入りに磨きます〈右〉。この切り口部分から雨が染み込んでしまうので、できるだけツルツルにしましょう。

 

▼内装の壁と床は、紫外線焼けと汚れを防止する透明塗料で塗装します。

 

▼事前に行った基礎工事は別にして、 建築着工から実働およそ30日……
外の階段と外構工事を残し、全ての工事が終わりました。

ちょうど、この日、人気雑誌「KURA くら」の取材で写真撮影とお施主さんのインタビューが行われました。
後日、紹介します。

▲安曇野市の景観条例に基づき、少し濃いめのオーク色に仕上げました。
たしかに、あまり派手な色や奇抜な意匠は歓迎しませんが、好みによっては、ヨーロッパ風のカラフルな色を楽しみたいという 人もいるかと思います。でも、残念ながら、安曇野の森では駄目ということのようです。

 

さらに数日後……
これで出来あがりです。
今回は、夜景の撮影に挑戦してみました。

 

▼KURA のカメラマン氏が素敵な写真を撮ってくれました。
無論、撮影の腕も良いのだけれど、なぜかモデルがとっても Good !
良い想い出になるでしょう。

▼〈左〉広くとったL形のベランダが気持ち良い。子供にとっては、その手摺も格好の遊び場になってしまう。

▲〈右〉ホッ、と落ち着けるロフトスペース。意外と雨の音も気にならず、窓もペアガラスなので静かな寝室になりそう。


▲今回こだわったスウェーデン製のシステムキッチン。象徴的な北欧パインの木目が素敵…と、大いにご満足。
そのキッチンに対面するカウンターコーナーもお気に入り。芸術家肌の大工さんが造ってくれたもの。

 

▼庭の南に記念樹を植樹……
近くのHAMAフラワパーク安曇野さんで、一目惚れしてしまったという「ニセアカシア」を、ご夫妻お二人で手植えしました。いつか大きく育って、立派なシンボルツリーになることでしょう。

 

▼お二人のログハウスにそっくりの郵便ポスト……
「これ良いセンスですね…」と言うと、「残った廃材で自分で作ったんです」と、おっしゃる。
ビックリ、感心、感動です。
(わたしも真似して作っちゃおうかな……)

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

暑い最なかに始まった工事を終えてみると、いつのまにか稲穂が実る季節を過ぎ、肌寒ささえ感じる時期になっていました。
夢を託したこのログハウスで、これからTさんたちの 山ぐらしが始まります。
そして、やはり此処で、子供さん、お孫さん、ひ孫……へと、それぞれの夢が育まれていくのでしょう。
いつまでも、いつまでも、それを見守りつづけることが叶うこの木の家に、Tさんご夫妻はどんな伝言を残していくのでしょうか。
いつも微笑みをたやさないお二人に似つかわしい、とても穏やかな暮らし〈ライフスタイル〉の選択 に共感し、感動する甲斐ある仕事をさせていただけたことに深く感謝します。

 

 

信州発信の人気雑誌 – KURA くら - にT様邸が紹介されました

 

 

 


[ ページ: 1 2 3 4 ]