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2021年8月12日(木)20:25
カテゴリ:安曇野の陽だまりから, 旅日記  トラックバック:URL

まだ夏は終わっていないのに、まるで秋の秋霖(しゅうりん)のような雨。涼しいのはいいけれど、ちょっと寂しい気もします。この8月という時は、1年で唯一〝戦争〟や〝平和〟という肩のこる話題に向き合う刹那です。だから今日は、一つ私の好きな詩を紹介しましょう。

             ✻

   街    与謝野晶子

遠い遠い処へ来て 私は今 変な街を見ている
変な街だ兵隊がいない 戦争をしようにも隣の国がない
大学教授が消防夫を兼ねている
医者が薬価を取らずあべこべに 病気に応じて 保養中の入費にと国立銀行の小切手をくれる
悪事を探訪する新聞記者がいない てんで悪事がないからなんだ
大臣はいても官省がない
大臣は畑へ出ている 工場へ勤めている 牧場に働いている
小説をつくっている 絵を描いている
中には掃除車の御者をしている者もある
(中略)
まったく変な街だ
私の自慢の東京と大違いの街だ
遠い遠い処へ来て私は今 変な街を見ている

             ✻

こんな、戦争も国境もなくなってしまった自由で平等な街なんて、確かに変なところである。でも、もしそんな街があるなら、私は住んでみたいと思う。
何とも素敵な女流詩人が明治期にはいたものだと、ほとほと感心させられる。
こうした〝天下の御意見番〟が、今一人でも多く必要だ。〝裸の王様〟みたいな政治家(選挙屋)はもういらない。

「八月の交響楽(シンフォニー)」より




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